朝、バカ犬と共に工場に出勤する。
工場に着くとすぐ、ぼくは工場の鍵を開けそれからツバキ城の鍵を開ける。
そのあいだ、バカ犬がなにをしているか?というと、小さな芝生の敷地を駆け回っている。
ヒモで結んでいないので、自由といえば自由。
そのあとツバキ城の中で長いヒモで結ばれるので束の間の自由、といってもいい。
さて鍵を開けてバカ犬を呼ぶと、なんと、
我が社の看板、つまり「御神火」と描かれた木の看板にオシッコをかけている。
「いけないっ」とぼくは大声で言った。
しかしテツはキョトンとした顔で首を傾げなおもオシッコを続けた。
この看板は父親が造ったもので、工場を移転するさいにぼくが頼み込んでもらってきたものだ。
一枚板で、これは昔、父の友人が贈ってくれたものだった。
まあね、犬は字が読めないんだろうけど。
それに電柱のように、ちょうど芝の上に立っていてオシッコもかけやすいんだろう。
困ったもんだなあ、と思った。