辛いのは日曜日の夕方である。
夕方から夜にかけて、人恋しさが募るのが毎日だった。
しかし原稿を書き上げるまでは、とにかく部屋に籠もって、と若いぼくは思っていた。
夕方から夜にかけてのあの粒子の荒い、芥子粒のようなものがどこからともなく湧いてきてそれはやがて夜へて代わってゆく。
その時間がくるとぼくはいてもたってもいられない妙な気分を、毎日のように味わった。
しかし、それが日曜日ともなると耐え難いものになる。
なぜなのか?
自分でもよくはわからなかった。
夜がきたらとりあえず原稿書きは終わりと自分で決めた約束があり銭湯へ行って帰ってくると部屋でまたウイスキーを飲んだ。
次第に誰かと話したくなり電話の受話器を取った。しかし、掛ける相手が誰もいない。
その少しまえに、それまで付き合っていた女性から突然の別れを告げられ、未だに理解できないまま酒を飲むごとにその苦しみが腹の奥底から沸き立った。
そこで、ぼくは各地の天気予報を聞くことにした。
市外局番をまわしさらに177をダイヤルすると各地の天気予報を告げる女性の声が聞こえた。
それを聞いて、すこしホッとするのである。
あるとき、そんなことをしている自分にふと気が付いて
「おまえ、おかしいよ、ぜったいにおかしいよ」
と自分のことを思った。 |