6.「おれはすごい」という奴には近寄るべからず

ウイスキーを飲むと、なんだか酷く酔いが廻った。
六畳の片隅に台所がありその前に立って、グラスを煽った。
ボトルはおもしろい形でNEWSという、その春に新発売されたものだった。
酔ってくると、いままで食べていなかった分ものすごく腹が減っていることに気が付きみそ汁を作って飲んだ。
しかし味噌の味加減を見るのに小皿がない。
そこでお椀をひっくり返しそこにみそ汁をよそった。
我ながら、いいアイディアだ、と感心した。
そのうち、そうか、このお椀の裏はこうするためにあったんだ、と思った。
(そんなことはないので良い子はまねしないようにね)
すごい発見だ、おれはすごいぞ、と繰り返し思った。
このころからぼくは本当におかしくなりはじめていた。

つづく