いよいよ中国に行く日がやってきた。
梅雨が開け熱い日差しが照りつけていた。
成田発の飛行機は四時なので、余裕をみて十一時頃部屋を出ればいいだろうと思った。
途中、新宿に寄って28mmの広角レンズを買って行こうと思っていた。
新品のレンズは高いので中古のレンズを一本買いたいと思った。
それというのもまたしてもあの酒井が
「中国は広いから、広角じゃなきゃ撮れないっしょ」
と言ったのである。
中国に行ったことのない男がなんでそんなことを知っているのか? と思ったけれど
しかし考えてみたらぼくはそれまで50mmの標準レンズ一本でなんでも撮ってきたのである。
今回もそれで充分だろうと思ったけれど言われてみればたしかにそんな気もしてきた。
新宿のカメラのキムラヤに寄ってレンズを見た。
しかし中古の28mmといっても、結構な本数があり見ていると目移りがしてどれが良いのかよくわからなくなってしまった。
長いこと考えているうちに、午後一時を廻ってしまっていることに気が付いた。
2万円のレンズを買い、あわてて日暮里まで行った。
しかし、ホームまできて、どの電車が成田に行くのかよくわからない。
そこで来た電車に飛び乗って、ほっと一息付いた。
しかしこの電車はなんだか、ずいぶんゆっくり走っている。
アナウンスを聞くと、成田につくのは四時半頃でそれでは間に合わないではないか、と慌てた。 鈍行に乗ってしまったらしいのだ。 |