20.小説を書き上げた日
そうやってバイトに明け暮れる日々が続いた。
小説は、だいたいは書き上げたもののやはりどう考えてもこの作品が賞をとるとは思えなかった。
しかし、書いたものなので送ってみようと思った。
若い頃というのは、とにかくこんなものなんだろうなと今になって思ったりする。
自分の力が足りていないのに夢ばかり見ているのだ。
もしもあのとき、その小説が新人賞を受賞して晴れて作家になったとして、ではそのあと どうなったのか?
と考えてみると答えは明白となる。
ぼくは賞も取れないどころか一次審査にも引っかからなかった。
それがそのときの実力だったのだ。
あれから16年が経ってずいぶんいろいろなことがあった。
そうして今はインターネットのホームページにこのころのことを書いている。
小説を書くんだ、と力まなくてもこうして毎日楽しみに書けばいいんだ、と近頃になって思っている。
そうやって、自分の限界を知ることで逆に楽しみが増えてきたりすることもあるんだなあ、と思った。
しかし、当時はそんなことをしみじみ考えている余裕はなかった。
梅雨が終わり、本格的に暑くなりつつあった。