では、実際にもの書きになるためになにをしたら良いのか?
わからないんです。
すみません。
で、振り返って自分がしてきたことを思い出すと、こんなことがありました。
当時22歳のころ、とある翻訳家の人からこんなことを言われたことを思い出しました。
「きみねえ、原稿を書く仕事をしたいっていう若者がどれだけいると思っているの?
多分東京に住んでる80パーセントの人はそう思っていると思うよ」
彼にそう言われたものの、ぼくは
「はあ」
としか答えることが出来なかった。
言い返す言葉もなにもなかった。
そうなんだろうなあ、と思っただけである。
当時通っていた美学校の赤瀬川教室のクラスメイトもほとんどの人は、そういう人になりたくて学校に来ていたのだろう。
しかし、それだけでは、なにも変わらないことが学校に行くとよくわかる。
「作家になりたい」
という人に限って、文章を書いていない人が多い。
頭で想像するだけで、実際にはなにもやっていない感じなのだ。
原稿を書いたら人に読んで貰わなければこの仕事は成り立たないのに、書いていな い。
読んでもらうのが恥ずかしいという人もいるけれどそれもなんだか違う気がする。
とにかく書いて、自分の頭のなかのものを字にしなければ、なにも始まらないのだった。
しかしぼくはそれを始めてすぐノイローゼのようになってしまった。
書くことなにもが見つからなかったからだった。 |