成田空港の入り口にタクシーはさしかかっていた。 おじいさんの運転手さんは車をサッと降りるとトランクを開けて警備員に見せた。
こうすることになっているらしい。
「飛行機の会社はどこだったっけなあ?」
とおじいさんは言った。
ぼくはコピー用紙を引っぱりだしてその会社の名前を読み上げた。
「ああ、じゃあもうひとつ向こうだ」
そう言ってようやく成田空港に着いたのだった。
時間もまだ少しは余裕があるようだった。
料金は16000円で二万円は掛からなかったもののそれでも痛い出費だった。
地球の歩き方のカウンターに行くとそこでチケットを手渡された。
しかしどれがチケットなのか、まるでわからず係りのお姉さんに心配で何度も訊いた。
しかしお姉さんはめんどくさがって早口で、同じ事を繰り返すだけだった。
とりあえず、このチケットとパスポートを持って飛行機に乗ればいい、と言われた。
帰りは自分でリコンファームをするようにと言われたけれど、それが何なのかまったくわからないまま次の人の順番になってしまった。
出入国カードに必要なことを書いて係員に出すと
「きみは70歳なの?」
と訊かれた。
なんのことを言われているのか、まったくわからず
「はあ?」
と首を傾げて聞き返した。
生年月日は西暦で書かなければいけないのにぼくは昭和で書いていたためにこんなことになってしまったらしい。
汗をかいて、ようやく飛行機の座席に座った。
となりの女性も同じ地球の歩き方のチケットを買ったらしいことが、なんとなくわかった。 これからどうなるんだろう?
と自分のことを考えた。 |